interior & barrier-free NOCO DESIGN の佐藤です。

「浴槽にまたぐ際の手摺が欲しい。」とのご要望があり、浴室の手摺工事を行いました。
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これは取付前の画像。
築35年のお宅ですので、ユニットバスではなく在来工法のお風呂です。

ご高齢になったご主人が浴槽へまたぐ際に、水栓金物(蛇口)を支えにしているそうです。しっかり握れませんし、混合水栓(お湯とお水の両方がブレンドされて出るもの)ですのでやけどの心配があり、奥様が手摺取付の依頼をされました。

ポイントは浴槽の床の高さと、洗い場の床の高さの高低差。
これが大きければ大きいほど、浴槽へのまたぎ越しの際にバランスを崩し易く、転倒の危険が高まります。

このお宅も、浴槽と洗い場の床の高低差が20㎝くらいあり、またぐ時に身体の上半身を大きくかがませる動作となります。
この場合つかまりやすいのは横手摺。ご本人様の動作の確認もさせていただき、介護保険の手続きも経て、取付工事を行いました。

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この場所への手摺の取付はいわゆる定番の場所です。

(最近のユニットバスでは、ほとんどのメーカーさんが安全を考慮して、洗い場床と浴槽床の高低差10~12cm程度の設計になっています。高低差が少ない場合は上体がある程度起き上がったまま動作できるので、縦手摺の方がつかまりやすいかもしれません。が、使用するご本人様の身体状態にもよります。ご本人の意向を汲んでプランするのが一番です。)


ところが、すぐに追加工事の依頼がありました。
反対側にも手摺が欲しいと。

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ご本人様の身体状況は「加齢による筋力低下」と「軽い健忘(認知力の低下)」
手摺工事計画の当初は一人で入浴しており、浴室に入りそのまま正面を向かって座り、身体を洗い、浴槽をまたぐ。という一連の動作でした。

が、工事完了の頃には状況が変わっていました。
身体状況としては、一人での入浴は十分可能なはず。ですが極度にお風呂嫌いのご本人が、奥様が一緒でないと入浴を拒否するようになっていたのです。

それにより、浴室に入り身体をひるがえして反対向きに立って、身体を洗ってもらい、その方向のまま浴槽をまたぐ。という動作に変わっていました。

そのために取り付けたのはこの手摺。

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下地の関係で、若干高い位置になりました。
いわるゆ定番の位置ではありません。
本来もっと低い位置に横手摺と、脱衣室への出入り口の横(この画像では横手摺の右端のあたり)に縦手摺をつける事が多いです。

が、このお宅の場合定番の位置では使いにくかったはずです。
この高い位置につけたため、洗い場で身体を洗ってもらう時に胸より少し下の位置でつかまることが出来ます
またそのまま横移動して手摺につかまったまま浴槽をまたぐ事が出来、なおかつ浴室と脱衣室との移動にも、足元の段差を超える際の支えとなりました。
一石三鳥です。

これは本当に使いやすい。安心安全になったと喜んでいただきました。
反対に当初取り付けた手摺は、残念ながらほとんど使っていないとの事です。


このように、手摺の取付位置には「定番の位置」がありますが、身体状況・介護状況・取付下地の状況などにより「定番の位置」がベストな場所とは限りません。
大事なのは、日々の動作を観察すること。手摺を必要とするご本人がどこを支えにして動作しているのか把握して、それを施工業者にきちんと伝える事です。
バリアフリー改修を学んだ施工者は施主から何も言われなければ「定番の場所」に取付しがちです。バリアフリーのお得意な施工業者だからといって、施工者に任せきりにするのではなく、プランニングにご本人の日常動作を反映させるように努力しましょう。